大河←吾郎

だるまさんがころんだ





校舎の屋上につくられたグラウンドで、日々練習を重ねる野球部

ある日、暇を持て余していたメンバーは部長の突然の思い付きにより
皆で一つの遊びをすることとなった



「なんで俺が…!」
「じゃんけんに負けたからでしょー?」

「…はいはい、やりますよ。やればいいんでしょ」

不服だと溜め息一つ吐いて、大河は皆と距離を取るため壁際に向かう
「高三にもなってだるまさんが転んだをやるなんてなぁ」
「まあ、いい息抜きになるんじゃない?」


「始めますよ?」

やる気も何もあったもんじゃないと言いたげな目をした鬼がくるりと後方に振り向き、
確認の合図をとると再度前に向き直す

「おーし!どっからでもかかってきなさーい!」
「…藤井やる気満々じゃん」

そして鬼は、くるりと振り返る


「だるまさんが転んだ」
「うわっ…とと。早ぇよ大河!あっぶね〜」
固唾を呑む暇もなく始まった途端、バランスを崩しかける者多数
その中で抗議の声があがるが、それを聞き流すかのように鬼は一呼吸置く

「…たく。あ、茂野先輩動きました」
「マジでか!?」
「だってダーリン無茶な体勢でいるからよ〜」

心底悔しそうに、唇を尖らせつつ鬼の方へ向かう吾郎に苦笑いのクラスメイトたち


「あーくそ!いけると思ったんだけどなぁ」
「はいはい、さっさと来て下さいよ。始められないでしょうが」
「わりーわりー!よし、これでいいな!」

「んじゃ、始めますよ」(男相手に手繋ぐか普通…)


包み込むように握られたそれを認めて特に気にするわけでもなく続行する


「よーし!今俺が助けに行くぞ茂野ー!」
「だからどっからその自信はきてんのよアンタ…っ?!」


刹那、一同は目の前にいる囚われ人の鋭い視線に釘付けになった


「………」

いかにも「俺と大河の世界に入り込むんじゃねえ」という想いを投げかける吾郎に凍り付く面々


「…!」
そんな彼に、さては誰かが何かしでかしたかと互いを見合いながら、そろりと吾郎の右手を見やる
そこには繋がれた二人の手


(アレがしたかったのね?!)


普段の部活での光景で、なんとなしに、周囲が気に掛けていたこと
納得するのに皆、そう時間はかからなかった


いつまで経っても身動き一つしない彼らを不思議に思った大河は首を捻る
「?どうしたんスか先輩たち…顔色悪いですけど」
「いやいやいやいや、なんでも!なんでもないです!」


(もうオレ(私)らいる意味なくね?!なんか分からないけど二人を取り巻くオーラが怖い!)


吾郎の独占力剥き出しの様子に身を震わせ、足が動かせない者ばかり
それに痺れを切らした鬼は、本日何度目か知れない吐息が漏れることになる

「…あの、動いてもらわないと終わらないんスけど」
「お前ら早く助けに来いよ〜!」


(そうさせないのはお前だ茂野!)
一同の心は一つになっている。そう思っていた矢先、


「みんな動かねえから合わせてたけど大河の言うとおりだぞ!俺行ってくるぜ!」


(バカがいた…!)


いざ参らんとする赤髪の青年の後ろ姿を見送るなかで、
彼の無事を祈りつつも皆合掌した






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藤井くんの安否が問われます←
オチが見えなくなっただるまさんが転んだネタ

この遊びを提案したのは部長こと56くん(大河と手を繋ぎたいがため)
開始直後、真っ先に動いたのも彼の策略(大河と手を繋g/以下略)
今日も聖秀野球部は平和ですね!←待て